僕だけがいない街 かんそうなど

こんばんは。minamoです。

 

今回は漫画『僕だけがいない街』一気読みの感想を書きます。

 

○全体的に

前半の再上映による未来変更や変えられない未来という鬱病展開はとても面白かった。小学生時代の改変劇も痛快だった。ただ悟が寝て起きた後(つまり真犯人のネタバレ以降)は正直冗長で退屈。タイトルの本質がそこに置かれているにも関わらず大して響かなかったのは悲しい。2周目読んだらまた変わるかも。

 

○キャラクターについて

・藤沼悟

主人公。【再上映】によって多くの命を救ったヒーロー。中身29歳にして加代ちゃんに半ばガチ恋の様相を呈していたため信頼できない語り手として容疑者候補に入っていた。

心で思ったことの8割くらいベラベラしゃべるのはともかく「(ァ、声に出てた...)」って独白するのが最高にオタク。岡部倫太郎より遥かに賢く動くので見ていてストレスがない。小学生の体というハンデがありながらほぼノーミスで正解にたどり着く様子はコナンを見ているようでシビれた。

タイトルの『僕だけがいない街』は悟が自己を消した(仮死状態の)世界を観察することで自己の存在証明とするというような意味合い。冒頭の漫画のくだりや中盤のケンヤとのお前は誰だ的なやりとりからも本作のテーマの一つがそこに置かれていることは明らか。

2億パー加代ちゃんとくっつくと思ってたので15年後でひっくり返ってしまった。描写されなかったけどたぶん悟もひっくり返ってるし二度目の眠りの遠因になってるに違いない。

推しのセリフは「『この時』を失ってたまるか」

 

・藤沼佐知子(ママ)

観察の獣。最初は有能すぎて消されちゃったんかな〜と思いきや作中描写世界線内ではほぼ無事に過ごせてたので良かった良かった。

ステータスおばけなので出てくるシーンでは大体活躍するか何かに気づく。絶対影で探偵事務所開いてる。この人が信用できるので悟も信用できてほしいと思いながら読んでた。

推しのセリフは「でかした!!!」

 

・雛月加代

メインヒロイン。まぁかわいい。18年前における第一救助対象であり二度【失敗】したとこではこの先何ループするんやろかとビクビクしてた。

文集『私だけがいない街』は序盤に示されたタイトル回収のヒントになっている。

小学生時代に悟と付き合わなかったのは不自然な大人っぽさから実質的な年齢差みたいなものを感じ取ってたからで時間が経ったときに告白するんかなとか思ってたんすけどね。ハァ〜〜〜〜。

それなりに鋭いが子供っぽさをちゃんと兼ねており小学5年生であることに違和感はない。

推しのセリフは「悟はさ...アタシのヒーローだよ」

 

・片桐愛梨

前半・後半の出番にブランクがありすぎたせいで印象が薄かった。命を救ったり救われたりしたのも真犯人という本作の核に近づくより遥か前の話なのでキャラが物語に入り込めていないというか。悟に与えた2つの影響【前に踏み込む】【信頼】も後者は枷になってしまったし役割的に「お前そんなデカい顔できるか...???」と思いながら後半を読んでた。とにかく中盤に出番がなさすぎたな、アーーーメン。

推しのセリフは「言葉ってさ、声に出してるうちに本当になる気がする」

 

・小林賢也

18年前の悟のグループの中で一番カースト高そうな人間でクラスメイトへの発言力があり種々の変化に目ざといため、悟を信用して物語を読むならば彼も容疑者候補となっていた。とはいえ小学生の体というのは大きなハンデであるため普通に頼もしい味方として読み進めていた。

遡行間も無く悟の違和感に気がつき接近を試みる様子は牧瀬紅莉栖を彷彿とさせニヤニヤしてた。はじめのうちは加代ガチ恋勢につき彼女周辺の目線を観察していたことで悟の異常にも思い至ったのだと考えていたが、実際は驚くほど純粋な正義で動いていた。思想実力ともにヒーローにふさわしいが、自己犠牲を全く厭わない衛宮型英雄病の嫌いがありワーカホリックなやつなんだろうなぁと思うと少し悲しくなる。日常に寄せて考えると思い浮かぶのはやはり葉山隼人・平田洋介あたりの真っ直ぐな正義の名前だろうか。主人公と別角度で問題解決の糸口を探す二枚目。作中で鬱病発動することがないため弱点らしい弱点が見当たらないのが逆に玉に瑕か。

推しのセリフは「俺はお前のスペアだ。もしもの時、裁かれるのはお前じゃない」

 

・白鳥潤(ユウキさん)
ペーパークラフトおじさん。最初の世界線で八代に偽の殺人犯として祭り上げられた冤罪被害者。ぼっちの小学生と遊んであげる優しい人間だったがその性質を逆手に取られ残念なことに。その世界での澤田の調査では『アリバイ、物証に関して自分以上に父親に不利な面では黙秘し続けた』『父親を庇ったのでは』という記述があったがDVD等は八代の仕込みであり、それを『黙秘』したということは仕込んだ人間=真犯人が八代だと察しながらも彼を庇って死刑まで受けたという可能性まで出てくる(容疑を否認してるのは生存願望で、自分は違うけどかと言って過去に勇気を教えてくれた八代を追い詰めたくはないという優しさみたいな)。
悟に【勇気】を与えた人物で、彼のおかげで悟はぼっちオタクから社会への適合と明るい人間関係構築にこぎつけたと言える。
この通りただのぐう聖なんだが冤罪を免れる世界線においても(アリバイ作りのため)悟にトラックの車やバイクなどをパンクさせられたり窓に石を投げられたりと憂き目に遭いがちだった。
推しのセリフは「勇気を出して」

 

・八代学

悟や加代、賢也たちを最も近くで見ていたと言える大人。悟のカウンセリングや加代の家庭環境へのアプローチなど、作中の悟目線では信用の塊として映っていたが天空から犯人探しをする気で読むとこいつが真犯人であることには事前に気づける。飴のくだりの代償行為の説明はターゲットの変更余地を示唆しているし、理路整然とした対応は周到さと狡猾な動きができるポテンシャルを証明している。犯人像と子供達との関係性に合致することはいわずもがな、愛梨が睨んだ『西園(先生と呼ばれている)』というヒントから『八代(先生)』がクロじゃないと思うのはミスリードで、早期に明かされた本質っぽい容疑者について18年前世界で言及されていなさすぎることを考慮すると西園は18年前は別の名前・素性を被って活動していたという推測ができる。

...長々書いたが推理小説ではないので作中速度より早く犯人に見当をつけてマウントを取ってもしょうがない。八代について書くべきはその迷言botぶりだろう。口を開けばそれっぽい言葉が生える才能はまさに先生や議員向き(ほんまか)。

・「勇気ある行動の結末が『悲劇』でいいはずないだろう?」

・「善行も悪行も本質は同じ、人が自らの欠陥を補う為の行いに過ぎない」

挙げ始めたらキリがないほど本の帯に書けそうな文句を垂れていて素敵。そういう性質も合わせて彼からはジョジョのラスボス、特に吉良吉影を連想せざるを得なかった。町に潜む正体不明の大量殺人鬼であり動機も目も癖も何かアレ。証拠を残さないので裁くために一捻りする必要があったわけだが八代の場合は【自供】という荒技に頼ってしまっていて残念(まぁ他にやりよう思いつかないんだが)。

吉良吉影と大きく異なる点は主人公が父性を見出しているところで、先述の通り悟が真相に当たるその時まで【信頼】してしまっていること。この辺の絆めいた悪役との関係性は虚淵作品を思わせる。

推しのセリフは「心の中の足りない何かを埋められて時、それが最高に幸せな瞬間だ」

 

 

○さいごに

こんな感じでキャラは立ってるし小学生編のサスペンスは本当面白かった。ただ、くどいようだが終盤はは悟が衰弱してたり犯人割れてたりで勢いつきようがなかったのでやっぱりバスケットボールのとこで犯人明かすならそこでラストスパートまで持ってく必要があったんじゃないかなーと。どのみちアイリの扱いは相当難しかっただろうけど...。

渋いこと書いたけどトータルで見るとかなり強い作品だと思うのでまた時間があるときにアニメ版も見てみたい。

読了ありがとうございました。