二代目の憂鬱

有頂天家族~二代目の帰朝~に関する雑記をメモがてら少々。

 

さて、本作『二代目の帰朝』は3部からなる有頂天家族シリーズの第二部という位置づけであるが、ただいま絶賛アニメ放映中でもあり筆者も2ヵ月ほど前に原作を復習読了した。そのためアニメしか見てない人にとってはネタバレになりうる内容も含むかもしれないので注意されたい。

 

まず、タイトルにもなっている二代目とは。

 

一つ目は代名詞としての【二代目】。かの弁天を打ち破る天狗的才能を持つ英国紳士のこと。この説明でも明らかになるように、彼には【二代目】以外の呼称が与えられていない(『英国かぶれ』などは除く)。すなわち彼はハイセ*1である。さらに本人は【二代目】と呼ばれることを忌み嫌う。名前は存在を語る上で超重要な要素なのだが、それどころか彼は嫌な呼ばれ方でしか呼ばれないという鬱病案件を抱えているのだ。紗霧は自ら呼ばれたくない名前を名乗ったから自業自得であるし紗霧というちゃんとした名前も持っているのに対し、二代目は望んでもないのに天狗に拉致され勝手に二代目候補にされ洛中界隈で二代目としか呼ばれなくなり、挙句の果てには正当な二代目からも勘当?される。

では今の彼は何なのか。二代目でもないのに二代目と呼ばれる負のアイデンティティを背負って生きる彼は物語の最終盤で暴れ狂う。これが天狗の悩みというものなのかは定かではないが、第三作では二代目に対する全うな救済が用意されることを願うばかりである。

 

次に、関係性としての【二代目】。第一作に対する第二作、というメタ的な二代目。総一郎が務めた偽衛門の二代目。赤玉先生が胡坐をかいた如意ヶ嶽薬師の二代目。おまけで早雲が務めた偽電気ブラン工場の二代目。

物語の中でそれぞれの二代目が現れるが、重要であるのはやはり偽衛門と薬師の二代目であろう。そして、語られずとも厳然と立ち現れるメッセージがある。

 

「二代目は先代に敵わない」

 

玉蘭の件以前はあんなにとんがっていた矢一郎であるが、いくら丸くなったといえども先代下鴨総一郎には敵わないことを自他ともに認めている。それは総一郎の要素を4兄弟が分け合った(総一郎が4兄弟の要素をすべて兼ね備えた最強の狸)という設定からして当然のことである。

そして、薬師の二代目。物語を通して余裕を崩さず弁天をも打ち破り天下無敵の存在かと思わせておきながら、クライマックスで家を完全破壊され燃え盛る自宅へ威風堂々とやってきた【父親】に対して、それまでは天狗の力も誇りも失った侮蔑すべき老害だと認識していたにも関わらず最後の最後で「敵わない」と自覚してしまう。個人的にとても綺麗なワンカットでアニメの描写にも期待している場面なのだが、原作においては「なぜ二代目が赤玉先生に敵わないと悟ったのか」が明確には表現されていない。そこが表現せずとも【二代目】が【先代】に勝てないという関係性の為すところなのだと解釈する。

 

最後のシーンにとどまらず、二代目の帰朝においては意図してかどうかはさておき天狗サイドの心理描写が不足している。大団円で締めくくると思われる三作目において天狗たちの思うところも描いてもらうと嬉しいのだが果たして。

しかしこれでも進歩はあったのだ。第一作『有頂天家族』の時点では弁天は誰にも抑えられない暴君であり、彼女が考えることもほとんど理解できずおよそサイコパスであったにも関わらず、二作目においては二代目に敗北を喫したことをはじめに人間味が出てきたというか共感が得られるサイドに寄って来た。

負けっぱなしで黙っている彼女ではないだろうが・・・。海星が弁天を執拗に嫌う理由もはっきりしないので海星VS弁天の決着(矢三郎の取り合いのキャットファイトならぬたぬきファイト)も見たいし最終作に期待するものは多い。

 

とりあえずこのくらいで。

*1:東京喰種:reより、ドイツ語で『名無し』の意